温泉街の片隅に、昭和40年代から続いたストリップ小屋がありました。
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シルエットの女性が「ごらんください」というからには、見なければならないだろう。男として。
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客席から舞台。花道に舞った姫。末期は熱帯から来た姫。
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頑張って書いた「満員御礼」。字は上手くないが、努力したのはわかる。
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冷房はないので、天井の扇風機だけが、夏の暑さを乗りきる手段だった。
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ステージの上には扇情的な色のライト。係りの人が音楽に合わせて付けたり消したり。
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入り口には入場料を払う窓口。
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レトロな配電盤の上には大入り袋が並ぶ。
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昭和41年。オープンはこのくらいか。この頃は達筆。
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末期の平成4年には、マジックで適当に書いてある。
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平成4年2月に時は止まった。
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刈谷の紳士が名を轟かせる。ストリップ小屋でも轟かせる。場所は選ばない。
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昔は大らかで、タクシー会社・旅行代理店・観光案内所まで協賛して名を連ねていた。
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一方、華やかな舞台の裏では、舞姫たちの生活があった。
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台所もあり、ここで賄いが作られた。熱帯舞姫の寝泊まりも、当然ここだった。
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カラーボックスを改造した鏡台。ここでキレイになった舞姫。
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ここにはここの掟がある。曰く「ホキだけ」「ステテ」「オーフ」。
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鏡の裏には熱帯舞姫のサインが。1986年。
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落書きは至るところに残る。姫の足跡。
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熱帯からはるばるやってきた温泉街の片隅で、彼女たちのメッセージが叫ぶ。
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本国に帰った彼女たちは、この日の事を覚えているだろうか。
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舞台のソデのハイビスカスだけは、確かにそれを覚えている。
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